北朝鮮国境の旅(丹東)3

時間の感覚麻痺しているのか、時間が分からない。
携帯の時刻を見る事もしない。
そんな所に来てしまった。

レンガ造りの家。
TVでみた中国の農村の家そのものだ。
築50年?判らないがとても古そう。
もちろんガスなどはなく、釜戸で料理をする。

この土地の風習なのかは分からないが、部屋に地面より50cmほど高く、2畳ほどの空間がある。
ここに布団が置いてあるので、ベットみたいなものである。
おじいちゃんの家は部屋が3つ。
けして広くない。家財道具も少ない。
おじいちゃんが家族を紹介してくれる。
私も拙い中国語で挨拶をする。
家族は5人、おじいちゃんには孫がいる。
4歳の女の子だ。
はじめは恥ずかしいみたいで、影に隠れていたみたいだが、直ぐに近寄ってきた。
私の中国語力はこの4歳の女の子と一緒らしく、今までに無いスムーズな会話が出来た。
女の子はランニングシャツとダブダブのパンツ、そしてお父さんのスリッパで庭を駈けずり回っている。
無邪気で純粋に育っていると思う。

自分の家の周りを案内してくれる。
大きなスリッパがバタバタ言いながら、今にもこけそうな勢いではしゃいでいる。
「ここが豚小屋、あれが牛小屋、これ鶏・・・・」と説明してくれた。

でっかいブタ

ロバの子供
じいちゃんの畑、田んぼは家の目の前から見える。
広大だ。
そこでトウモロコシ、米、野菜を作っている。

中国の農家の主食はトウモロコシみたいだ。
トウモロコシ畑が異様に多い。北海道よりも規模がでかいどう。
夕食の時刻になり、家族一緒に食べる。
この席に同席させてもらった。
メニュー。実に質素だ。
一、トウモロコシをゆでたもの
実に旨い。モチモチして新鮮。
スイートコーンの様に甘くは無い。
癖になる旨さで、4本頂いた。
二、肉まん(包子)
豚肉少々、インゲン豆、たまねぎ、香辛料。餃子の大きくした様な 形。これも素朴で旨い。
三、インゲン豆の炒め物
インゲン豆を炒めただけ。しかしこれも味付けが絶妙。中華ぽく無く、日本人でもどんどんいけ る。
四、落花生のゆでたもの
癖になり、一番多く頂いた。
五、ゆで卵
どこの農家も鶏を20匹ほど放し飼いにしている。
その卵なので新鮮。
しかし人民は半熟を食べる習慣が無いらしく、スーパー固ゆで。
半熟で食べたかった。
今日の夕食はこの様な素朴な物だ。
調味料を使わない、素材の旨味で頂く、今日本で言えばスローフードの最先端であろう。
おじいちゃん達は、ニコニコしながら家族と話しながら食べている。
もちろん私には中国語の意味が分からないが、雰囲気は伝わってきた。
「頑張って中国語を勉強せねば!」とやる気が出た瞬間。
家族の幸せはお金や高い旨いものを食べるだけではなく、この様な家族の絆、暖かい家族が大事なんだろうなと考えさせられた一瞬だった。
私が途中で家族のお土産にスイカ(水果)丸ごと1個(3元)を買って来たので、皆でデザートとして食べた。
夜8時位だろうか、スイカの種を庭に捨てに行こうと外に出た途端、子牛が暗闇から目の前に現れた。
こちらもビックリして大きなリアクションを取ってしまい、子牛もビックリした様で庭を走り回りだした。

庭を駆けずり回る子牛
その様な光景を見ながら、真っ暗の中国の田舎の匂いを楽しんだ。
ふと空を見上げると、途轍もないプラネタリューム以上の星空が広がっていた。
何万個だろうか?分からないが、天の川、アンタレス、スバル、流れ星、すべて目に入ってくる。
スイカの種を吐き捨てながら、子牛が走り回っているこの中国の田舎で、日本では中々見られない星空を1時間ほど観賞した。
家に戻るともう50cmほどの高い座間に布団を引いて、皆寝る準備をしていた。
私はどこで寝るんだろうと思ったのだが、中国人家族5人+日本人1人が川の字を描いて寝ることになった。
しかし何処の誰かも分からない日本人をよくもここまでもてなしてくれるのだろうか。
お金も払っていないし・・・日本人の感覚からは全く想像できない環境に来ているのは確かだ。
そうこう考えているうちに、睡魔に襲われ寝てしまっていた。
朝4時、鶏、豚が騒ぎ出す。
「コッケ、ブッヒ、コッケ、ブッヒ」
なんて早いんだろうかと目を開けると、家族はもう仕事の準備をしているではないか!
早起きは3元の徳なのだろうか?
畑に仕事に行くので寝てて良いよと言う事なので。
私はもう少し寝させてもらう事にしよう。
孫が「起来!起来!」と起してくれ、目が覚めた。
朝食はゆで卵とトウモロコシ。旨い。
おじいちゃんが丹東のバスが8時に来るからそこまで送るよ。と言ってくれた。
別れがやってきた。
短い出会い触れ合いの時間だったが、生まれて初めての良い経験をさせてもらった。
オーストラリアではファームスティはした経験は有るのだが、今回はまったく違う。
「真実の中国農家体験とでも言いましょうか!」
家族にお礼を言い、「また来ても良いですか?」と聞くと、
「是非来て下さい。待っているよ。」
と笑顔で答えてくれた。
何か好きな物を買ってと、私は孫に100元を渡した。
そして握手をしておじいちゃんの3輪バイクに乗り込んだ。

朝もやの中国田舎
バス停に送ってもらい、おじいちゃんと握手をしてまたの再開を約束した。

ここがバス停らしい?
バス停??バス停の看板なんぞ、ありませんぞ!
あぁ。あの方式かぁ!バス来たら、とめりゃいいんだ。
続く。
北朝鮮国境の旅